Welcom Internet World
彼はニューヨーク育ちの米国人。コンピューター業界では知られた男である。アメリカではFBIの捜査にも協力したことのある有名人だ。
南雲は彼から2日間のレクチャーを受けた。
「例えば、君が僕にメールを送るだろう。どこの国で、どこの街で、どこのサーバーから送られたということがここに記されているんだよ」
だから、脅迫メールしたヤツがいとも簡単に特定されて捕まるのか。
「ネットカフェから送っても、その場所が分かるし、送信時間も分かる。そこに行って店員にこの時間にいた人を尋ねる。警察はそうして特定しているんだ。携帯も同じで契約者と料金支払者はすぐに分かる。携帯は最初に信号を受けるアンテナがある場所から地域が特定されるんだ。送った本人は自分が特定されないと思っているだろうけど、バレバレなんだよ。とくに日本はひどいね。プライバシーはないよ」
アメリカにはPCを持ち込むと入官で検査されることがあるらしい。テロ対策の一環という理由でハードデスクを調べられ、もし、その中に幼女ポルノ写真があれば、逮捕される。そのような件数は増加しているのだそうだ。
「このIPアドレスだけでは日本から送ったとしか分からないだろう。それをこのソフトでチェックすると」
あらまあ、場所がどんどん狭くなるではないか。南雲がブログをプーケットで上げていると書いていながら、実はすでに大阪にいる。そんなことも、これでバレるわけだ。
「Yacht Havenにはサーバーがある。ここからの送信メールは全てIPが記録される。受信も同じだ。アルカイダの声明はこのシステム以外のものを利用しているから、特定まで時間もかかるんだ。連中の中にはぼくのようなプロがいるってことさ」
ふむふむ。南雲に送られてきたメールやMOBコメントをチェックしてもらった。
「簡単だよ、ほら、これは、これと・・・」
イアンは東京の西麻布に自分のネット関係の会社を持っている。彼女は日本人。彼の夢もヨットで世界一周である。
「ニューヨークはSingaporeと同じになっちまった。安全で清潔で規制がきつい。セントラルパークでは裸足は禁止だよ。回転寿司も認可されない。足裏についたばい菌をまき散らさない、また、誰かが寿司になにか薬物を振りかけるかも知れない。そんな理由だぜ。公園でビールも飲めないんだ」
イアンはAトレインで高校に通っていた。
「怖かったよ。カツアゲに喧嘩になんでもありだ。夜の地下鉄は乗るヤツが悪い。そんな時代だったんだけど、今は日本の地下鉄より快適さ。でも、おもしろくないよ。街は銀行が増えてアーティストが減った」
イアンから2日間の講義を受けて南雲はちょっとネットが分かってきた。偽善者で悪で前科一犯のゴロツキだが、このような善良な友人がいる。
イアンは南雲のブログにPCを連動させた。友人から送られてきたメールはどこのプロバイダーと契約されていて、どこから送られてきて、誰が契約したかまで、その気になれば調べることが出来るのだそうだ。アンビリーバブル。
南雲の友人に盗聴マニアがいる。彼は携帯を傍受するのが趣味である。
「夜中の電話の内容は男が女に言い訳しているのがもっとも多いですわ。そんな男に女は容赦ないでっせぇ」
えらい時代になったものだ。
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