雨のバースーデー
昨夜から大雨。本日午後2時からケンの誕生会である。
パーティはオープンハウス形式。2時から始まり、いつ終わるかハッキリした時間はない。客は来ては帰り、また次の新しい客が来る。誕生会ではBBQと飲み物が振るまわられる。
雨は止む気配がない。朝なのに夕方のように薄暗い。ケンはタイ女に不信感を抱いている。彼は友だちになり、つきあい、そして愛を感じたいのだが、バーギャルの目的は「銭」のみ。優しいケンだが彼も女たちにとってただの「お客さん」の1人に過ぎない。
「どうしてもタイ女が理解できないんだ」
ケンの口癖である。しかし、南雲は何度も彼に説明している。
「バーギャル(セックスワーカー)は貧しい家庭の女の子たちだ。売春して稼ぎ、仕送りする。外人(ファラン)と結婚できれば、今の環境から脱出できるし、金持になれる。しかし、女たちの相手している外人のほとんどは観光客で通りすがり。二度とタイに戻らないかも知れない、それじゃ今のうちに銭を頂こう」
ケンは頭では理解しても、心では分からない。彼は誠意を尽くし人間関係を構築しようと思っている。アメリカの不思議は人道主義を唱えながら平気で市民の頭上に爆弾を落とす。そして人道的として医者を派遣する。
「例えば、アメリカの女たちがタイ人や中国人や日本人の男たちに金で買われていたら、いい気がするかい。タイ人はニコニコ笑っているが、例え売春婦であっても、船に連れ込むのを好ましいと思っているタイ人はいないぜ。観光客でパドンビーチのホテルに連れ込むなら目立たないが、ここじゃ誰もが見て知っている」
雨は嵐の様相を呈してきた。大工たちは昨夕帰る前に機械や道具にビニールシートを被せた。この雨じゃ工事は中止だろう。われらがよく行くココナツレストラン&バーの女性経営者(といっても1人で切り盛りしているのだが)ペンはバーギャルの立場をよく知っているが、買春する外人にはいい感情を持っていない。
「トニーは日本人だからニップン(日本人)でファランじゃないのよ。それにあんたは女を船に持ち込まない。いいことよ。ディスコやライブハウスでナンパして。そこから友だちになるのはOK。ケンはバーギャルを何人替えているか知っている。よくないわ」
ペンも離婚している。2人の子供がいる。彼女はランチデリバリーも始めた。値段は宅配代金を加算してあるから村や近所の食堂の倍はする。
「今はローシーズンだから、こうでもしないとやっていけないのよ。ビールも大瓶100だけど、今は80バーツにしてあるの。でも、ファランには値下げしてないの。トニーや馴染みさんだけよ」
値段は隣のビッグママ食堂より高い。バーという冠があるからだが、ホステスは彼女が兼務する。ケンはペンの買春批判や割高料金も気にくわない。
「彼女と話して落ち込むならココナツへ行かなきゃいいんだよ。距離を置かないと疲れるぜ。こっちは所詮、どこかへ旅立つ男じゃないか。相手にすれば一生つきあう相手じゃないし、彼らの社会の一員でもない。ただのちょっと金を持っている外人に過ぎないんだ」
それは哀しすぎる。ケンはそんな顔をする。しかし、ヨットライフを優雅でワンダフルに思うのは現実を知らない人だけだ。脂汗にまみれ、狭いエンジンルームで作業をしたり、ちょっとした電気関係で丸1日つぶしたり、豪華絢爛とはほど遠いところにいるのが現実である。ただ、それをどのように受け入れ、どのように楽しむか。マジで腹を立てるなら他の生活をすればいだけのこと。
男女関係も同じだ。鬱とおしいと感じたり、イヤな奴になったと思えば別れればいい。実に簡単ではないか。人生は短い。つまらない事やつまらない奴らと関わっている暇はない。大雨であろうと明るく元気に気持ちよく過ごすのだ。て、ノー天気すぎるか。
現在タイ時間午前8時。天候記す必要なし。音楽サイケデリックミカバンド「タイムマシンにお願い」
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